融資相談をする際のポイント(事務所通信「FinanceNews2023年7月号」より)

長きに渡ったコロナ禍からの売上回復、原価の高騰、人件費の上昇等、皆様も顧問先の経営者様からご相談される機会が多いのではないでしょうか。企業のコスト増加要因が非常に多い中で資金対策については是非これまで以上に注意を払い取り組んでいただきたいと思います。今回は資金需要の増加にあたり融資相談をする際のポイントを金融機関の視点も踏まえてお伝えいたします。

【資金使途を明確に】
一般的に運転資金は下記のように計算します。
≪経常運転資金=売上債権+棚卸資産−仕入債務≫
金融機関は申込金額が妥当かどうか、2~3期分の決算書を確認し動きのない不良債権はないか、不良在庫はないか確認し審査をします。
その上で金融機関に融資金額と共に資金使途を明確に伝えることは重要です。
その資金は何に使用するのか。借入することでどのような成果が得られるのか。利益が計上でき返済が確実である点等、運転資金の場合、資金使途の具体的な内容や直近試算表以外の資料を銀行から要求されないケースが多いですが、銀行担当者からすると以上のような情報が明確に説明できれば、審査をスムーズに進めることが出来る為、こちら側から情報を伝えていきましょう。

【資金繰り表の活用】
資金繰り表とは「企業の資金がいつ・いくら足りなくなるのか」を確認する為の資料であり、融資の申込金額に妥当性があるか否かを判断する為に必要となっています。
売上・仕入と入金・支払のタイミングはどの業種でもズレるのが一般的です。その為、損益が黒字であっても現預金はマイナスであったり、その逆の状況も頻繁に起こります。こうしたことから、各金融機関は損益とは違う視点で企業の実態を把握する必要があります。
その為、金融機関は資金繰り表も重要視しています。自社で作成することで実際にいくら資金が必要なのかを把握することができますし、数字に強い経営者として金融機関からも信頼を得ることができるようになりますので、直近の決算書から是非資金繰り表を作成してみましょう。

【融資相談は時期も大事】
金融機関の成績は4月~9月の上半期、10月~3月が下半期で9月末に半期の数字の仮決算を行います。
この仮決算の成績は対外的に公表をする為、どの銀行もこの7月以降は9月末の仮決算に向けて、融資残高の増強を目指し、融資提案や新規開拓が活発になっていきます。融資相談をするチャンスの時期とも言えます。
金融機関が新規開拓をする際には、事前に会社HP、不動産の登記簿謄本、帝国データバンク等を活用し、融資できる可能性が高い企業に訪問します。
もし取引銀行だけでなく既存取引の無い金融機関の渉外担当者が、飛び込みで営業に来た際には、いい提案を受けるチャンスかもしれませんので門前払いするのではなく、決算書を渡した上で、提案を聞いてみるのもいいでしょう。

【最後に】
今月は資金調達の中で銀行融資を受ける際のポイントをご説明いたしました。
融資相談の極意は早め早めに相談をすることです。資金繰りに厳しくなってから相談しても金融機関の融資審査での見方も厳しくなっていきます。最悪の場合、資金調達できないケースもあります。
企業のコスト増加要因を意識し、万一にも困った際に資金の調達手段を事前に考えておけば選択の幅も広がります。
様々な資料が必要になりますが、事前に準備して資金需要に合わせ、早めの融資相談をすることで銀行の融資可能額を把握しておくことも大事です。今回のポイントを押さえ、資金対策については是非これまで以上に余裕をもってご準備をしていただきたいと思います。