インボイス制度導入による影響 (事務所通信「TaxNews2023年2月号」より)

インボイス制度開始に向けて、取引先から登録番号の確認の通知が来たことはないでしょうか。
その確認の目的と、どのような影響があるのかについて見ていきましょう。

Ⅰ 取引先への確認とは

インボイス制度開始後は、免税事業者に対する支払いについて、消費税相当額が自社の納める消費税額から控除できず、税込の取引価格を変更しない場合、その分本体価格を値上げしたのと同じ効果になります。
そのため、今現在、取引先に免税事業者がいないか、事業者間で確認する動きが進んでいます。取引先には仕入先・外注先はもちろん、家賃の支払先である大家さんなど、全ての経費のうち消費税の対象となる支払い先が含まれます。もし、免税事業者がいた場合、取引先の対応によって、以下のような影響があります。

Ⅱ 取引先がインボイス申請しないと、当社の負担が増加?

取引先に免税事業者がある場合には、今まで通りの税込価格を維持すると消費税相当額が当社(支払側)の負担となります。値段交渉をする場合にはいくらまで下げればよいか、以下でシミュレーションしてみました。

インボイス制度開始当初は、経過措置があるため消費税相当分の10%を値引きしてしまうと、逆に当社は利益が出ることになり、その損益分岐点は控除できない消費税分20%×10%÷1.1=約1.8%値引きとなります。

Ⅲ 取引先が免税事業者から課税事業者になると、必ず資金繰り悪化?

取引先がインボイス制度を機に課税事業者となる場合には、当社(支払側)の負担が増加することはありませんが、取引先は消費税の納税分、手元に残っていた益税が縮小し、資金繰りが悪化することになります。
取引先の資金繰りがどの程度悪化するのか、以下でシミュレーションしてみました。

Ⅳ 下請法・独占禁止法に注意

免税事業者と取引する場合、値引きをしないと当社の負担になってしまいますが、一方的な値引き通知は問題となる場合があります。下請法や独占禁止法の規制に該当しないように注意する必要があります。