融資の種類と資金使途について (事務所通信「FinanceNews2023年10月号」より)

今回のテーマは「融資の種類と資金使途」についてです。銀行に借入の相談をする際に色々な質問を受けるかと思います。希望する借入金額、借入期間、担保の有無など、さまざまです。その中でも特に重要なのが「資金使途」です。「資金使途」とは文字通り、お金の使い道です。銀行は法人・個人のお客様から預金を預かり、そのお金を貸し出して収益を上げています。そのため、多くのお客様から預かっている大切なお金は、しっかりと事業に使われることを望んでいます。今回は融資の種類と資金使途についてお伝えします。

【融資の種類】

・証書貸付・・・金銭消費貸借契約書に基づく貸付。契約によって借入期間は短期・長期両方です。運転資金、設備資金両方で利用されます。運転資金の場合は5~7年返済、設備資金の場合は購入する資産によりますが、7~10年以上返済というケースが多いです。設備資金の方が長期で借りられる要素としては、購入する資産の耐用年数を基準にするからです。運転資金の場合の資金使途は仕入・外注先への支払いやその他経費支払いとして申し込むのが一般的です。一方設備資金は、機械や不動産など特定の資産を購入する資金として申し込みます。

・手形貸付・・・約束手形を使用した貸付です。いわゆる短期借入金。3ヶ月や6ヶ月、1年という短い期間での期限一括返済が一般的です。資金使途は一時的な売上増加に伴う、増加運転資金などに利用されることが多いです。よく経営の本で「運転資金は短期借入金で調達して、更新を繰り返し利息返済だけにしなさい」というのを目にします。しかし、実務的な話をすると稟議を毎回申請し直したり、手形の更新処理をするのは金融機関側からすると手間だと感じられる可能性もあります。たしかに月々のキャッシュアウトを抑えるという意味では、良い借り方かもしれませんが、必ずしも更新のたびにこちらの条件が通るとは限りません。

・当座貸越・・・限度額を設定し、限度額の範囲内であればいつでも借入・返済ができる貸付です。実務的には年に1回程度会社の業績や利用頻度などを考慮して限度額の見直しを行います。資金使途は特段問われないことが多いですが、本業に関係のない投資有価証券の購入や役員借入金の返済などに使用すると銀行側の印象はあまりよくありません。当座貸越は決まった返済日などはありませんが、自由な反面、当座貸越があると借入金と投資のバランス、運転資金とのバランスが見づらくなってしまうので、借入返済予定表を活用して全体像を把握することをおすすめします。

【設備資金での注意点】

 設備資金で融資を申し込む際に見積書の段階で申し込むケースもあるかと思います。融資の審査途中に値引きなどにより、購入金額が減額され融資の申込金額を下回ることもありますが、その場合はすぐに銀行に報告をしましょう。設備資金は申込通りに資産の購入資金として正しく利用しているか、融資の資金使途を厳格に管理しています。具体的には融資実行後すぐに購入先に振込をしたり、購入後の領収書の控えを提出するケースがほとんどです。先ほどのように融資金額以下の購入代金に変更となった場合は差額を繰り上げ返済するよう求められる可能性もあります。また、その差額を別の資金に使用した場合は、資金使途違反になる可能性もありますのでご注意ください。

【最後に】

 融資の種類によってさまざまな特徴や注意点がありますので、それぞれの借入方法について理解し、資金使途に合った借り方をしましょう。また、資金使途通りに融資金を活用しないと資金使途違反となり、一括弁済を求められる場合もあります。このようなリスクも考慮して、金額の大小にかかわらずしっかりと銀行に報告してください。会社を運営していく中で銀行取引は必要不可欠となりますので、銀行と良好な関係を築くためにも今回のことは是非覚えておいていただけると幸いです。