民事信託契約の見直し

相続や事業承継のスキームに民事信託を採用することがあります。
信託法は平成18年に改正が入り現在の形になったものですので、比較的新しい手法です。
そのため、問題が起きた時の判例が現在も積み重ねられている真っ最中ですので、「生き物」であると弊所は認識しております。

少し前になりますが、民事信託業界では著名な司法書士の先生が民事信託は遺留分減殺請求(当時。現在は遺留分侵害額請求)の対象にはならないということをおっしゃられていて、条文も判例もないため、どっちなのかが確定していない状態でしたが、裁判で対象になるという判決が出たといったことがあります。
当時、もし遺留分の対象にならないということを前提に信託契約を締結していたのであれは、対象になることが確定した時点で対策の手法を再検討し、そのままで行くのか変更をするのか、再検討しなければならないことになります。

上記は一例ですが、「生き物」である以上、節々で見直しが必要になります。
弊所では個々の信託契約を管理しておりますので、適宜対応ができますが、「作っておしまい」型の専門家に依頼をしてしまうと、あとでビックリする結末を迎えることになりかねません。

以前、信託契約書のセカンドオピニオンをさせていただいた際、信託財産目録にズラッと農地が並んでいたことがありました。
これは判例以前の問題なのですが、農地は農業委員会を通さないと信託をすることができません。
これも民事信託で打ち出している先生が作成された信託契約書でした。そしてその先生のブログには農地は農業委員会を通さないと信託はできない旨の記載も・・・・・
後から農地は信託できないことを学ばれたのかもしれませんが、その時に過去の自分が作った信託を見返して連絡を入れるくらいはプロとしてするべきないのではないか?と思いました。

信託スキームに影響を及ぼす判例等が出た際に連絡をしてくれるのか?も依頼をする際にはポイントとなってくると感じました。

各種セミナーや書籍などで家族信託が取り上げられ、比較的に簡単にできると取り上げられてはいますが、まだ新しい制度であることを念頭におき、本当に信託である必要があるのか?も踏まえて、スキームとして採用するか否かの検討が必要ですね。
そして現在においても狙っていることが実現できる信託契約なのか?も健康診断ではありませんが、定期的に再検討する機会は設けるべきだと思います。