表面金利と実質金利(事務所通信「FinanceNews2021年12月号」より)

今回のテーマは「表面金利と実質金利」についてです。

会社が借入をする際に、どうしても一番気になってしまうのが金利だと思います。昨今、貸出金利の低下により、会社としても資金調達がしやすくなっておりますが、金融機関の考える金利はどのようなものがあるのでしょうか。

【表面金利と実質金利】

金融機関が考える金利には「表面金利」と「実質金利」の2種類があります。
「表面金利」とは、普段から馴染みのある、金融機関から提示される金利のことです。こちらは借り入れの際に必ず提示されるので、よく目にすると思いますし、一般的によく知られているものです。
一方で「実質金利」は、金融機関の内部的な金利の考え方です。「実効金利」や「実金」などとも呼ばれ、一般的にはあまり知られていませんが、銀行員にとっては一般的な考え方です。
計算方法としては下記になります。

実質金利=(支払利息-受取利息)÷(借入金-預金)×100

例を挙げて計算をしてみると、下記のようになります。

【例】借入金1億円(表面金利1%)

   預金6千万円(預金金利0.001%)

支払利息=1億円×1%=100万円

受取利息=6千万円×0.001%=600円≒0万円

(100万円-0万円)÷(1億円-6千万円)×100=2.5%

このように表面金利では1%でも、実質金利を求めると2.5%の金利を払っていることになります。考え方としては、1億円の融資を受けていても、6千万円を預金として同じ金融機関に預けていることで、実質的に考えると差額の4千万円を100万円の利息を払って借りているということになります。

【融資審査の観点】

融資申込の稟議書には表面金利はもちろんのこと、実質金利も必ず記載します。
融資先に提示する表面金利を決めるうえで、実質金利はとても重要で、実質金利を通して、どれだけ金利を払ってくれているかというのを金融機関は見ており、審査にも影響してきます。金融機関の担当者は審査を有利に運ぶために、他行から預金を集めてくださいと持ち掛けてきたり、普通預金などから流動性の低い定期預金に替えることで、外に流出しづらくさせるようにする場合もあります。また、融資の条件として、売上入金の口座の変更なども考えられます。

【定期預金には注意!】

金融機関の目線から、定期預金は担保と同じように見られている可能性があります。
実際に資金繰りなどで使いたい場合でもなかなか解約させてくれない場合もあります。

金融機関目線で言うと、いざという時に置いておいた定期預金に手を付けるということは、資金繰り・経営がうまくいっていないのではないか、他行から資金調達ができなくなったのではないかと懸念されてしまう可能性もあります。最悪の場合、「解約されると次回以降の融資の審査にも影響が出る可能性があります」と言われてしまうこともありますので、定期預金には注意が必要です。

【取引金融機関別の実質金利一覧表を作成して有利に取引を進めましょう】

取引しているそれぞれの金融機関の実質金利を計算して、一覧表を作成するのがおすすめです。一覧表としてまとめることで、現状の取引状況を整理することができますし、表面金利は低くていつもお世話になっていると思っていたメインの金融機関が、実は一番実質金利が高かったということも大いにあり得ます。

表面金利が高い金融機関には、預金を多く預けることで実質金利を上げて、表面金利の引き下げ交渉ができるかもしれません。また、複数の金融機関で競合させるなどすることで好条件での取引につながることもあります。

有利な金融機関との取引を進めるためにも、実質金利からのアプローチも良いかもしれません。