取引金融機関を増やす時の対応(事務所通信「FinanceNews2021年11月号」より)

今回は、取引金融機関を増やす場合の対応方法や金融機関側の考えている事等に関してご紹介します。

預金取引開始の場合

預金口座を開設する際には、原則店頭では口座開設できない決まりとなっています。開設するには、担当者が法人の事務所へ訪問し事業実態等を確認してから手続きに入るので、すぐには口座開設できないのが現状です。

融資取引開始の場合
ケース1:金融機関側から取引を提案された場合

法人の場合は融資提案をされることが取引のきっかけとなる場合がありますが、その際内容に関しては交渉によって有利な条件を引き出すこともできます。

プロパー融資で交渉

まず、金融機関からは保証協会付の融資を提案されます。しかし、保証協会の融資であるのなら既存の取引金融機関から借りても条件は同じです。加えて、保証協会の枠は決まっているので、そこに新規金融機関が入り込んでくるのは既存の取引金融機関からしたら面白くありません。プロパー融資でないのなら借りるメリットは少ないのです。

新規であれば、プロパー融資として借りることになった場合、条件付きとなることが多いと思われます。一例ではありますが、定期預金や定期積金の契約、次回保証協会を利用する際は今回プロパー融資を出してくれた金融機関から借りるといったことが予想されます。

返済期間を長くするよう交渉

新規取引の場合は大体が2、3年の返済期間で提案されます。しかし、それだけ短い期間であれば借りるメリットは少なくなります。返済実績のない企業は、金融機関も二の足を踏むものです。金融機関側からの提案であってもリスクを少なくするために3年くらいの返済期間となるのが実情となっております。しかし、企業の事を知らない、貸したお金を返してくれるような人柄なのかも分からないのが

原因ですから、それを解消できれば返済期間を長くできる可能性はあります。

あくまで一例ですが、一流企業との安定的な取引がある、地域の有力者が代表取締役である等です。こういった情報を提供することで、5年ほどの返済期間を獲得できれば十分と言えます。

ケース2:こちらから取引をもちかける場合

こちらから話をするからといって不利な条件で契約する必要はありません。交渉の仕方次第で良い条件の融資を引き出せることもあります。

預金取引開始時での交渉

この時点では会社の事を知っていただくためにパンフレットや商品の説明、工場があれば工場見学をしてもらい会社の理解を深めていただくことを推奨します。その時の内容が稟議書に記載されるので、良い話は必ず伝えていきましょう。

飛び込みで訪問してくる担当者と交渉

この場合は自然な流れなので、店頭にいきなり赴いた場合と違い警戒されません。と言いますのも、通常は既存の融資取引先に相談するので、何か良くないこと(財務の悪化や金融機関への隠し事等)があり、新規の金融機関に頼るしかない状況なのではないかと危惧するためです。新規において、有利な条件を引き出すためには融資提案書をお願いしてみてください。そこで他の金融機関が持ってきた融資提案書を渡して競合させるのも良いかもしれません。他には、次回の融資条件を良くするために定期預金や定期積金の契約、回収口座や支払口座の一部変更をして取引実態が金融機関から視えるようにしておくことで金融機関からの印象が大きく変わる可能性が高いです。

最後に

上述のように、金融機関への対応はアプローチの始め方によって変わってきます。匙加減はありますが、お金を借りている立場だからといって消極的になる必要はありません。自社にとってより良い条件を引き出すために積極的に交渉していくことをお勧めいたします。