今回のテーマは、「資金使途違反」です。
会社が借入を行う際は、資金使途(資金の使い道)を明確にしなければなりません。借入にて調達した資金は金融機関と約束した資金使途通りに使用しなければ「資金使途違反」となり、借入の一括返済を求められたり、今後の融資にも悪い影響が出る可能性があります。また、保証協会の保証付きの場合、今後保証協会を利用した借入ができなくなる場合もあります。
【借入の資金使途】
事業用の借入の資金使途として大きく分けると「設備資金」と「運転資金」の2種類があります。
「設備資金」とは、工場や事務所・店舗などの建築や購入、機械や車両など、事業に利用する設備を購入するための資金です。実務的には、この借入を行った際は借入した日にその金融機関から支払先に振込することなどが条件となる事が多く、資金使途違反が起こりづらいといえます。
一方で「運転資金」は、商品の仕入れや材料の購入、外注先への支払い、諸経費の支払いなど、事業を運営していくための資金です。設備資金に比べて比較的自由に使える資金ですが、金融機関はその資金を使い切るまで通帳の移動を確認して、資金使途通りに使われているかをチェックしているケースが多いです。
【資金使途違反の例】
基本的に金融機関は、投資用有価証券の購入資金や、個人や関連会社への転貸資金などにはお金を貸しませんので、借入で調達した資金をそのようなことに流用したりすると、資金使途違反となります。
また、資金使途違反をしているつもりがなくても、知らず知らずのうちにしてしまっているケースもあります。下記は代表的な例です。
◆購入する設備の金額が値引きにより設備資金の申込金額よりも下回ってしまった◆
→よくあるパターンです。設備資金を申し込みした後に、値引きなどが発生した場合は速やかに金融機関に報告する必要があります。上記の場合、購入金額以内の申込金額に変更の手続きなどを行う必要があり、更に審査に時間がかかる可能性があります。
また、設備資金として申し込む際は、見積もりの金額ではなく、確定させた金額にて申し込みをするとスムーズに融資実行までこぎつけるでしょう。
◆設備資金の融資実行前にその設備を購入してしまう◆
→設備資金は、その資金で設備を購入するという契約になっているため、先に支払いをしてしまうとそれに該当しなくなってしまいます。また、頭金の支払いなども同じで、注意が必要です。
◆融資金を返済資金に使ってしまう◆
→借入をすると資金残高が増え、今まで毎月行っていた返済のための資金移動などをやめてしまうことがあります。融資金での返済は実行時の返済条件(借換え)以外は認められません。
◆借入をした期の決算書で、役員貸付金が増えている・役員借入金が減っている◆
→どちらも極端に増減していると、借入した資金を個人に流用したのではないかと疑われますので、注意が必要です。
【なぜ銀行は資金使途違反を嫌うのか】
・資金使途以外に使われることは約束違反であり、違う使い道の場合、返済できない可能性が高くなる
・資金使途違反の場合、保証協会などの保証付きの融資は、債務者が返済できない時に保証協会などが保証してくれない
上記が金融機関の本音の一部です。金融機関は融資金を回収できなくなることや、社会的信用を失うことを懸念します。そのためにも資金使途を明確にし、融資を行っています。
【借入申し込み時に再度注意を】
資金使途違反を防ぐには借入を申し込む側も注意が必要です。金融機関には正直に資金使途を伝えること、変更などがあった時には速やかに金融機関に報告するなど、真摯に対応すれば資金使途違反になる可能性も低くなります。会社を守るためにも原理原則通りの融資取引をしましょう。